メモリーズ

メモリーズ ~エピローグ~

エピローグ 我に返った時にはとっくに観たかったテレビ番組は始まっていた。 俺は慌ててリモコンを手に持ち、スイッチをオンにし、チャンネルを変えた。 テレビの音が部屋に流れる。 あの答えを知っているのは、当然、未来の彼女しか分からない。 しかし、俺…

メモリーズ ~第十三章 告白~

第十三章 告白 今日の天気は快晴だ。 あの中学の頃の一度目の大きなチャンスだった彼女と偶然出くわしたコンビニの日の天気に似ている。 あの時も快晴だった。 もう、あの日と同じ過ちは繰り返さない。 今日は絶対にする。 俺はそう覚悟を決めた。 やはり、…

メモリーズ ~第十二章 真実~

第十二章 真実 日はすっかり暮れ、今は雨模様だ。 昼間の快晴が嘘のように降り続けている。 さっきコンビニで買ったビニール傘から天を見上げた。 ビニールに当たる雨音が一定のリズムで鳴り続け、垂れ落ちた水滴が地面に落ち続けている。 俺の気持ちはこの…

メモリーズ ~第十一章 決断 その2~

第十一章 決断 その2 明南大学に着いた。 新御茶ノ水駅からキャンパスまでの足取りは重かった。 後はあの確証さえ取れれば全てのピースが出揃う事になる。 足取りも重くなる筈だ。 しかし、俺はキャンパスまで足を止める事はなかった。 俺は正門を潜り、周り…

メモリーズ ~第十一章 決断 その1~

第十一章 決断 その1 翌日、今回の様々な苦悩の元となったあの現場を訪れた。 ここに来るのはあの日以来だ。 心の中でここに来るのを避けていたのかもしれない。 休日の昼間なのに妙に静かだ。 周りには誰もいない。 子供の騒がしい音もしない。 するのはほ…

メモリーズ ~第十章 発覚~

第十章 発覚 彼女の会社を訪れてから、三日経った。 その間の仕事は相変わらず、凝滞だった。 いつも以上に山野にしつこくちょっかいを出され、武藤に嫌みを言われ、佐々木に怒鳴られた。 しかし、今の俺にとってそれを耐えるのはそう難しい事ではなかった。…

メモリーズ ~第九章 推測 その2~

第九章 推測 その2 翌日、仕事を早く終わらせ、今、俺は古丸海斗の通っていた明南大学に足を運ぶ為に最寄りの新御茶ノ水駅にいる。 暫く歩き、明南大学に到着した俺は正門を潜りキャンパスに入った。 立ち止まり、周りを見渡した。 俺は大学を卒業して、今の…

メモリーズ ~第九章 推測 その1~

第九章 推測 その1 彼女の勤め先を知っていから二日後、俺は会社に有給休暇を貰った。 案の定、彼女が勤めている会社からの最寄りの駅は岩本町駅だった。 暫く歩き、ネットで調べたマルワフーズの本社に辿り着いた。 地上から上を見渡した。 俺はビルに入る…

メモリーズ ~第八章 詮索~

第八章 詮索 今日は風の強い日だ。 朝は肌寒かったが昼には温かくなってきて、絶妙な風、気温から生み出された居心地の良さが俺の体を包み込む。 この感触が堪らなく好きだ。 春の昼の温かさ。 スズメが鳴く音。 風が窓に当たる音。 半開にした窓からそよ風…

メモリーズ ~第七章 目撃 その2~

第七章 目撃 その2 俺の気持ちは高まっていた。 足が自然と速くなった。 喫茶店を出てから、十分程で駅に着いた。 俺は階段を降り、改札を抜け、新宿線のホームへ向かった。 正直、こんな程度ではまた会える訳ないと思っている。 でも、少しでも可能性がある…

メモリーズ ~第七章 目撃 その1~

第七章 目撃 その1 今日は五月三日だ。 世間ではゴールデンウィーク真っ盛りだ。 基本的にインドア派の俺は休日は家にいる事が多い。 それはゴールデンウィークでも変わらない。 今は彼女もいないし、外に行っても特にする事はない。 たまに来る友達の誘いも…

メモリーズ ~第六章 不調~

第六章 不調 彼女との再会から三日経った。 その間、俺の睡眠状態は決して良いものではなかった。 三日間の合計睡眠時間は俺の普段の一日の平均睡眠時間と同じだった。 それでも今日もあの会社に行かなくてはならないと思うと、いつも以上に憂鬱になる。 し…

メモリーズ ~第五章 快楽~

第五章 快楽 キッチンの床に無造作に置いてあるスーパーの袋からカップ麺を一つ取り出した。 蓋を開け、かやくとスープを取り出し、キッチンの上に置いた。 夕食は外食にしようと思っていたが、早くアパートへ帰りたかった。 久しぶりの再会に興奮を抑えきれ…

メモリーズ ~第四章 再会~

第四章 再会 俺は今、会社にいる。 次に電話を掛ける家庭を探している所だ。 昨日あんな事があったが、今日も何一つ変わりなく、ノルマをこなす為の作業を淡々とこなしているのだ。 気持ちの切り変えは案外簡単だったが、疲労感で眠いのが正直な感想である。…

メモリーズ ~第三章 聴取~

第三章 聴取 俺は警察と救急車が来るまで、必死に持っていた知識を引き出し、古丸海斗の介護に当たった。 水を口に含ませ、嗽をさせ、背中を叩いて体から毒を吐き出そうとした。 勿論、こんな事やりたくなかったがそんな事言っている場合にはさせてくれなか…

メモリーズ ~第二章 発見~

第二章 発見 今日は四月二十三日だ。 今日も朝からずっと、電話越しで媚びて、断られの繰り返しであった。 上司や先輩からもいつも以上に嫌みを言われ、説教もされた。 この会社の定時は十七時半と一般的だが俺達にとっては都市伝説である。 今日は何とか六…

メモリーズ ~第一章 日常 その2~

第一章 日常 その2 昼食を済ませた俺は江東区に位置していているこの会社の喫煙室で休憩中である。 この時間がこの会社での唯一の至福の一時だ。 「あの糞野郎、今日も怒鳴りやがった」 「そうだな。聞いていた。いや、聞こえて来た」 同じ営業課の同期の間…

メモリーズ ~第一章 日常 その1~

第一章 日常 その1 電話の音が鳴りやまない。 五コール以内に出なければならない。 手当たり次第、電話を掛けなくてはならない。 今日もいつものように罵倒が飛んでいる。 ここでの挨拶は「オッス」だ。 毎朝、会社に来たら、まず朝礼で一人一人声出しをしな…

メモリーズ ~プロローグ~

プロローグ 良く通った事のある道だった。 所々の明かりが道を灯し、あの頃の記憶が走馬灯のように蘇った。 この道を通るのは中学生以来な筈だ。 昔を思い出したかったから、俺は今ここにいるのか。 指定された通学路より、早く帰れたこの道が俺の中学時代の…